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高校生がつなぐ里山文化。大保木でこんにゃく作り体験

お鍋やおでんの定番具材こんにゃく。日本人なら皆がよく知る食材です。しかし、あのプルプルのこんにゃくがどうやって作られるのか知っている人は少ないのではないでしょうか。
私もそんな一人。こんにゃく芋が原料なのは聞いたことがある。でも、芋がなんであんなプルプルに???
その謎を解明すべく、大保木で行われたこんにゃく作り体験を取材してきました!

 

1.里山に高校生が集まる

西条市の山間に位置する大保木地区。西条の市街地から車で約20分とは思えないほど雄大な自然が広がります。

大保木地区では、「大保木土曜教育」という、学生向けの里山での生活体験教室を年に数回行っています。大保木にお住いの方などが先生となり、かかし作りや薪割り体験など、自然豊かな里山の文化を体験する講座です。
2023年2月25日に開催された「こんにゃく作り体験」には、西条高校、西条農業高校から19人の生徒、3人の先生が大保木公民館に集まりました!

 

2.え、こんにゃくの材料には毒が⁉

今回、大保木で昔から作られているこんにゃくの作り方を教えてくれたのは、西条自然学校の法橋さん。西条自然学校は、愛媛の自然を守り、自然の楽しさを伝える活動をしているNPO法人で、法橋さんは植物の専門家です。

こんにゃくの材料は3つ。こんにゃく芋、灰汁(あく)、そして水です。

こんにゃく芋は、こんにゃく作りに使えるサイズに成長するまで3年以上かかり、今回用意したこんにゃく芋も4~5年かけて作られたものだそうです。しかも、こんにゃく芋は寒さに弱いので、春に畑に植えたものを秋には掘り返し、倉庫で冬を越した後、再度春に植える。という何とも手間のかかる野菜なんです。
こんにゃく芋には、毒性をもつ“シュウ酸カルシウム”という物質が含まれており、そのおかげでイノシシなどの野生動物も食べないそうですが、もちろん人間も生のままでは食べられません
初めて聞くこんにゃく芋のお話にみんな興味深々

もう一つの材料、灰汁(あく)は、漢字の通り、草木を燃やした灰を水に浸した上澄み液。大保木では、家庭ごとに作り方が違い、ヒノキの木のみを使うご家庭、ソバの茎を使うご家庭など、各家庭オリジナルレシピがあるとのことでした。灰汁は強いアルカリ性でこちらも毒性を持っています

ともに毒性のあるこんにゃく芋と灰汁を混ぜ合わせ茹でることで毒性のないこんにゃくが生まれるそうです。このこんにゃく作りは、東南アジアから伝わってきたそうですが、なんにせよ、こんな食べ方を発見した昔の人、すごすぎますね!

みんな真剣なまなざしで法橋さんの解説を聞いていました。

 

3.Let’sこんにゃく作り!

①茹でたこんにゃく芋をつぶす
藁(わら)が刺さるくらい柔らかくなるまで5時間ほど茹でたこんにゃく芋をつぶし、水を加えて滑らかにします。
昔は臼と杵を使っていたそうですが、現在は文明の利器、ミキサーが大活躍!
こんにゃく芋を手でほぐし、水と一緒にミキサーに入れてスイッチON。つぶした里芋のような粘り気にほんのりこんにゃくの匂いがするような?

貴重な体験にそこかしこでシャッターチャンスが!

②灰汁を投入
灰汁を入れた瞬間、なんだか懐かしいようなこんにゃくの匂いが一気に広がります!

どんどん粘り気が出てくるので、ボール固定係が超重要!

③丸める
握りこぶしサイズに丸めます。西条自然学校の法橋さんと山本さんがお手本を見せながら教えてくれました。

手に水をつけ、優しくコロコロ。幼き日にやった泥団子づくりを思い出します。

コロコロすればするほどツヤツヤに!

④茹でる
灰汁を抜き、こんにゃくを固めるために約 1 時間茹でます。大きなお鍋にお湯を沸かして投入!

たくさんのこんにゃく玉ができました!

 

4.山の恵みに感謝

茹で上がるのを待つ間には、西条自然学校 理事長の山本さんの講演も。

西条の自然について、自然とともに循環型の生活を送ってきた里山の文化について、みんな真剣に聞きます。

その後は、久しぶりの鉄棒に盛り上がったり、秋に作ったかかしと写真を撮ったり、大保木公民館の看板犬“ころちゃん“とふれあったりと、約1時間の山ならではのゆったりとした時間が流れました。

そしていよいよ、茹で上がったこんにゃくを実食!高校生、大保木公民館の館長さんからも「美味しい」の声が上がります。

触感がしっかりした作り立ての温かいこんにゃくは、こんにゃく自身の味を感じる一品。
それもそのはず、普段スーパーで買うこんにゃくは、こんにゃく成分が少なく、手作りこんにゃくの10分の1程度しか含まれていないそうです。こんにゃく成分が少ない分、水が多い。だから安いんですね。

最後にお世話してくれた大保木公民館の館長さんにお礼を伝え、大保木土曜教育は終了しました。

 

5.里山の文化をつなぐ

こんにゃく作りを教えてくれた法橋さんからお聞きしたのは、「山の文化を次の世代にも伝えたい」という言葉。高校生が大保木に来て里山の文化に触れ、その一端を伝えられてよかったと話してくれました。

大保木の土曜教育は、年に数回。2022年度は8回開催され、リピーターの学生もたくさんいたそうです。
西条高校の先生からは、大保木土曜教育などの地域との交流体験から、地域活性化に興味を持ち、地域創生を学ぶために大学進学した高校生も多いとも聞きました。
土曜教育の体験時間は約半日とそんなに長くはありません。しかし、普段の生活では触れるこのとのない里山での貴重な体験は、時間では推し量れない大切な学びの場、そして文化をつなぐ場となっているのです。

西条自然学校 理事長の山本さんのお話のなかでとても印象的だったのは、「現代は生活が均一化している」という言葉。その土地ごとの環境に合わせて形成された生活文化が、近代化とともにどんどん消えていってしまっています。もちろん、資料や写真で残すことができるものもあります。しかし、実際の感覚を残すのはとても難しいことです。この記事でも、こんにゃくの作り方はお伝えできたでしょう。しかし、こんにゃく芋の粘り気、灰汁を入れた瞬間の匂い、手作りこんにゃくの味や触感は、体験しないと伝わりません。

“文化を受け継ぐ”と聞くと難しいことのように思いますが、体験することも立派な第一歩なんだと改めて気づかされました。

西条自然学校さんでは、毎年12月にこんにゃく作り体験講座を実施しています。他にも草木染めやお茶づくりなど、毎月様々な体験教室を開催されていますので、HPや広報さいじょうでチェックしてください。

あなたも高校生たちのように、里山の文化をつなぐ担い手の一人になりませんか。

 

▼西条自然学校HP
https://saijo-shizen.org/

▼西条自然学校 理事長 山本さんのインタビュー記事はこちら
https://www.lovesaijo.com/work/co-akinai10/

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