「あなたは何を目的に移住するのですか?」厳しくも温かい、先輩移住者の愛あるメッセージ
LOVE SAIJO 編集部 2019年8月29日
現在、西条市は「移住者が増えているまち」として、注目を集めています。
そんな西条市は来る9月18日、都内で「移住」をテーマとしたトークイベントを開催します。
イベント開催に向けて、「西條そば甲(きのえ)」店主の荻原甲慎(おぎはら・こうしん)さんから、「先輩移住者」として、地方への移住を検討する皆さんへメッセージをいただきました。
少し厳しくも温かい、先輩移住者の愛に溢れたメッセージを是非ご覧ください。
以下、荻原さんからのメッセージです。
いま、移住を検討されている方々へ。
「一度きりの人生、自然豊かな場所で思うように人生を謳歌したい。」そんな思いがあるのではないでしょうか?
かく言う私も「この様なステキな所で生活ができたら良いな」なんて思った事がキッカケだったのかもしれません。
今やこの時代、ライフスタイルを選考する中で「移住」という選択肢もあり、充実した人生を送っている方がいる、一方で「移住すれども定住せず」という言葉があるほど、混沌とした状態があるのも事実です。
私が西条市へ来たのが今から15年前。私なりの経験と知識をお伝えし、皆様の移住ライフのヒントになればと思います。
『移住すればうまくいく』の落とし穴
私もお話しさせていただく予定の、こんなタイトルのイベントが9月18日に東京で開催されます。
【「移住すればうまくいく」の落とし穴。 ~「自分らしく生きる」 街、愛媛県西条市のリアルトーク~】
あたかも地元の人々が「落とし穴」を仕掛け、その「落とし穴」に移住者が落ちていく様のように取れますが、実はそうではないと思います。
移住者の経験不足・知識不足が原因で、トラップを自分で作って、自分で落ちて行ったと考えた方が良いかもしれません。
最大の「落とし穴」は、自分自身の過信によるものと思います。誰しもが「豊かな人生を送りたい」「今より 良い生活を送りたい」「新天地での夢ある暮らし」など考えがちですが、それは 自分自身だけで成り立つものでなく相手(地域社会)がいてからこそ存在するものだという認識が必要かもしれません。
ましてや移住してなら尚更のこと。その地は日本語が通じる外国だと思っても良いかも知れません。それほどハードルが高いと思ってもらっても過言ではないと思います。
しかしながら、高い山ほど頂上からの景色は素晴らしく、「この移住という山に登って良かった」と思えるのは必然です。
移住するまでとそれから
以前の記事でもお話しさせていただいたのですが、私はこんな経緯で移住を決意、移住後の生活を営んできました。
2002 年 5 月 西条市の「うちぬき」に出会う。そば屋になる事を決意。
2004 年 9 月 西条市へ。(妻子供 1 人・賃貸家賃 55,000 円)
2005 年 1 月 国民生活金融公庫より 800 万融資
2005 年 4 月 西條そば甲 創業(店舗 22 坪家賃 150,000 円)
2006 年 1 月 商工会議所青年部入会→地域経済との関わりを持つ必要性。
2006 年 6 月 「絹かわなす冷やかけ」発売→西条市の特産を蕎麦に起用。
2009 年 2 月 全日空機内誌「翼の王国」掲載
2013 年 7 月 自宅建築(50 坪総額 2,800 万円。店舗と自宅は別。)
2014 年 1 月 店舗買取(1,300 万円)
2017 年 6 月 そば粉製粉工場完成(自宅横 25 坪 500 万)
2018 年 6 月 ミシュランガイド愛媛広島版 掲載
※あくまでも一例です。
私は西条市で「そば屋」をする事を目的としていましたから、上記のようなお金の流れになりました。
目的も時と共に変わり、そば屋の店舗開店から店舗経営継続を目的とし、品質の向上と資産の形成の必要性を考え今に至ります。
また、家族構成も移住当初の3人から5人に増え、仕事(店舗)のあり方と家族のあり方を考えてきました。
もし、あなたの考えている仕事がフリーランスなら初期投資はもっと低く抑えられるかもしれません。就業・就農なら行政の支援を得るのも一つでしょう。
家族構成は個々で様々ですが、収入と家族構成の考えかたを一つの軸として移住のプランニングするのも必要と思います。
移住者の落とし穴(トラップ)
1 「目的」がぼやける
あなたは移住先で「何」がしたいのですか?
「目的」は何ですか?
何の為に、今の生活を置いてなぜ新天地に行くのですか?
例えば「自然豊かな環境で暮らしたいから」このように答える方もいるかもしれませんね。
でも、それは「目的」ではなく、「キッカケ」だと思います。もし、「自然豊かな環境で暮らしたいから」が目的なら、移住した時点で目的達成です。3 年も経てば「豊かな自然」もただの風景になります。
逆の立場で考えれば解ってもらえると思います。東京タワーを見てドキドキしませんよね。
つまり「東京」に住む事が目的ではなく、重要なのは東京で「何を」するのかです。これは移住先も同じ事。移住は「手段」です。
あなたは何を「目的」として移住するのですか?
2 私を解ってくれない。
「私を解ってくれない」そう思う時があります。しかしながら移住者とは、誰かにお願いされて来た人ではなく、あなた自身の判断で来た人です。あなたはお客さんではありません。あなたの常識は非常識という事もあります。
「私を解ってくれない」のではなく「あなたが解らなければならない」事もあります。また、あなたの個性は、相手が認めてくれて初めて「光る個性」なんだと思ってください。
そういった意味では移住とは「個性を出す場」ではなく、「個性が伸びる場」と思った方が良いかもしれません。
3 非日常の感動
移住先ではあらゆる場面で非日常の感動があります。(生活・文化・食・ etc.)
しかしそれは今あなたが置かれている環境下での「非日常」であって、こちらとしては「日常」です。
例えれば、直販所での野菜コーナーは、東京と比べると新鮮さと値段の安さで驚きます。しかし、それはあくまでも東京と比べたらのハナシです。
つまり「非日常」を主軸で移住すると、その感動はやがて感動に値せず、移住している事自体がぼやける事があります。「日常」と「非日常」のバランスが大切かもしれません。
4 自立するチカラ
突然、行政からの支援が止まることも想定しなければなりません。
現在の行政の風向きは「移住」に向いています。手厚い支援からサービスまで、あなたの側にいつもいてくれます。
しかしながら、時の流れと共に行政支援も変わります。いつ「アゲンストの風」になるかもしれません。移住相談窓口が縮小・閉鎖も考えられます。
マラソンで例えるなら行政サポートは「並走」と考えてください。「伴走」ではありません。42,195キロ走るのはあなた自身です。
自走・自立するチカラを持ってなくてはいけません。
自分らしく生きる街
「移住者」とは、自分自身の将来像を立体的に想像出来る人の事だと思います。
それは、ただ単に居住の場所を変えるというニュアンスではなく、人生のあり方を考えさせてくれる事だと思います。しかし無人島に移住するわけではありません。
常にあるのが目の前にいる人の存在です。移住先の地域の一員としてどのように自分を表現するのかが、「移住者」の考えていくことではないでしょうか。自己的から利他的になり相互扶助という概念が「移住者」には必要なことでしょう。
それを踏まえた上で地域社会が認めて、初めて「自分らしく生きる」事が言えると思うからです。私が住んでいる街はお互いが認め合えるステキな街です。
「どう西条で生きていくのか」を問うのではなく「なぜ西条で生きていくのか」を考えてください。きっとあなたなら出来るはず。
9月18日のイベント、そして西条市でお待ちしております。
【「移住すればうまくいく」の落とし穴。 ~「自分らしく生きる」 街、愛媛県西条市のリアルトーク~】
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