自然×サステナブル 小松高校 竹林整備
LOVE SAIJO 編集部 2023年6月1日
春の食材といえば“タケノコ”。漢字では“筍”と書き、“竹”+“旬”です。“旬”という漢字には10日間という意味があり、10日間で成長して竹になるから“筍”という漢字になったともいわれています。
その名の通り、成長スピードが速く、1日で100cm以上伸びたという記録もあるのだとか。
驚異的な成長スピードやまっすぐに育つ性質から、子孫繁栄の象徴として古くから縁起が良いとされてきた竹ですが、近年では「放置竹林」が全国で問題となっています。
小松高校が取り組んでいる、竹林整備と竹を有効活用する活動を取材しました。
1.放置竹林は何が問題?
日本では古くから竹が活用されてきました。建築資材としてはもちろん、かごやザル、すだれや物干し竿などの生活用品にも竹が使われています。縄文時代の遺跡からも竹かごが出土されているそうです。筍も古くから食べられていたようで日本最古の書物“古事記”にも出てきます。
資材としても、食材としても古くから重宝され、育てられてきた竹ですが、プラスチック製品の代替や、安価な外国産タケノコの流通により需要が激減した結果、手入れされなくなった竹林「放置竹林」が問題になっています。
放置された竹はその繁殖能力の高さから、周囲の林をどんどん浸食していきます。驚異的なスピードで成長する竹が生い茂ると、日光が遮られ、地面に光が届かないため、成長スピードが緩やかな他の植物が育ちにくい環境になってしまいます。多様な木々が生い茂っていたはずの森林は、竹林へと変貌していまい、木の実などを主食にしている鳥は姿を消してしまうなど、山の生態系を脅かす問題にも発展しかねません。
他にも、地中深くに根を伸ばしていく樹木とは違って、竹は地面の浅いところに根を広げていく性質があるそうです。そのため、雨が降った際、樹木であれば深くまではった木の根が杭となり、斜面の土を支えることができますが、根が浅い竹林では竹林ごと斜面が流れてしまう土砂災害が起こる可能性があるそうです。
生物の多様性を守る観点、土砂災害を防ぐという観点、この2つの面でも竹林整備は大切なんです。
2.10年以上続く伝統行事
小松高校では2009年から竹林整備が続けられています。
2023年4月30日の竹林整備活動には、生徒の皆さんはもちろん、先生方、保護者の方々、「竹林を良くする会」や「小松立志隊」などの地域の皆さんも協力し、60名以上が参加しました。
小松高校は小高い”養正が丘”の上に位置し、第3グラウンドまで有する校内は広大です。今回は4つのチームに分かれて作業を行いました。
チーム1 ツタが絡まる竹藪を駆逐!第3グラウンド整備班
第3グラウンドの端には、細い笹が生い茂り、他の木々やツタなどが絡まる藪が広がっていました。大人たちは草刈り機、小松高校生はノコギリを手に取り、どんどん伐採を進めます。
小松高校の竹林整備は伐採だけでは終わりません。竹の活用方法の1つとして切った竹を粉砕してパウダーにし、土壌改良に使っています。
イバラやツタなどが絡まる枝を引きはがし、粉砕しやすいサイズにノコギリでカットするのもお手の物。
約3時間の作業で笹はきれいに伐採され、うっそうとした藪はすっきり。藪の奥にあったフェンスも顔をだしました。
チーム2 斜面をチーム力で攻略 南側斜面整備班
校舎南側の急斜面には太い竹が。大人の皆さんがチェーンソーで切り倒した竹を、バケツリレーのように斜面下まで運びます。
斜面の下では、竹パウダーにする作業が進みます。大きな竹がどんどん吸い込まれていく様子は迫力満点。竹パウダーは甘い匂いがするんですね。
チーム3 メンマに有効活用 若竹収穫班
そこかしこで生えている若竹を収穫し、丁寧に皮をむいてナイフで小さくカットしてきます。こんなに育ったタケノコが食べられるなんで驚きですよね。
この若竹を加工してできるのが「ちょっと新しいメンマ “メンマチョ”(https://menmacho.jp/)」。放置竹林問題を身近に感じてもらいたい!という思いで開発された商品です。2022年には日本ギフト大賞にも選ばれています。この「メンマチョProject」を行っている山中 裕加さんは、この活動が評価され、2023年5月に都市と農山漁村の交流を盛んにする活動を表彰する第19回オーライ!ニッポン大賞でライフスタイル賞を受賞されました。
チーム4 美味しいごはんで体力回復!タケノコご飯班
作業後、参加者に振舞われたのは、タケノコご飯とお吸い物。
作業で疲れた身体に温かいごはんが染みわたります。
県で唯一のライフデザイン科のある小松高校。手際の良さも流石です!
3.自然を守るサステナブルな活動
竹はその生命力の高さから、継続的に整備し続ける必要があります。まさに、小松高校の校是「積微力行」。毎年の竹林整備というコツコツとした積み重ねが自然を守り、土砂災害を防ぐ大きな力となるんだなと思いました。
そして、小松高校の竹林整備は自然を守るだけでは終わりません。廃材の有効利用も進んでいます。
今回のたくさんの竹を粉砕して作った竹パウダーは、校舎の一角に広げられました。時間がたつと発酵が進み、たい肥化するそうです。
すると不思議なことにその一角はカブトムシの幼虫がいっぱい取れるんだとか。実際少し地面を掘っただけで数匹のカブトムシの幼虫を発見しました。夏には、地元の小学生を招待し、カブトムシの幼虫を捕まえてもらうイベントを開催予定だそうです。
小松高校では、さらに竹パウダーを使った生ごみコンポストの実験も行っているんだとか。小松高校の自然を守るサステナブルな取り組みはこれからも続きます。
▼小松高校HP
https://ehm-komatsu-h.esnet.ed.jp/
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