ふりむけば壬生川 〜想い受け継ぐ屋台〜
オニギリ 2024年10月9日
だんじり参戦!
1.夏の果実と秋の予感
気温が体温を超える、扇風機の風さえじっとりとするお盆。
冷蔵庫に入りきらないほどもらった果物を届けに、隣町に住む知人を訪れた。
どうやらこれから、屋台の台車づくりに取りかかるらしい。
今年の秋には、この台車で装いを新たにした屋台と、どこかで出会うかもしれない。
口いっぱいに梨をほおばりながら、そんな予感と果実のみずみずしさを同時にかみしめる。
2.そして秋、神無月への扉
今年の10月への入口は、秋という言葉が似合わないほど暑い。
陽は日に日に低く、昼は短くなっていくのに、「立秋」の秋の言葉のかわりに体から湯気が立ちそうだ。
そんなとき、ふと1つのイベントの広告が目に止まった。
– ふりむけば壬生川 –
洒落た曲名のようなネーミングに、思わずクスリと笑みがこぼれる。
「だんじり参戦!」というキャッチコピーに、暑さなど忘れて、秋への扉が開かれたように気分が涼しくなる。
3.夕暮れの屋台蔵
「ふりむけば壬生川」開催の前日。
陽が沈んだあとの道を、太鼓の音が聞こえる方へと歩く。
「だんじり、出たぁ〜!」興奮気味の幼い子どもの声とともに、屋台が光を浴びる。
旧西条市内から想いを受け継いだこの屋台は、今年台車を新調したらしい。
見おぼえのある色と形に、あの夏の日の予感が現実になったことを知る。
4.市場の朝
新しい台車は、お祭っ子の特等席。屋台をあずけられた肩で、人々が集う駅前へと向かう。
マルシェで屋台が人々に迎えられる瞬間のシャッターを逃すまいと、走って先回りをする。
「これから屋台、来るんですか?」高揚した声で訊ねられる。昂る感情を共有できたようで嬉しい。
ブースやテントでぎっしりの壬生川駅の傍ら、ロータリーに屋台がなだれ込むと、惜しみない拍手が贈られる。
差し上げの勇姿に、さらに大きな喝采が湧き起こる。
「争い事もないし、ほんと和気藹々です。」赤い腕章の青年は誇らしげだ。
思ったことが素直に言葉になる。「綺麗なお祭りですね!」
5.再会の約束
人の輪に囲まれながら、屋台が帰還した。しばらくの別れをためらうように、ゆらりと蔵に納められる。
自転車に乗った人がブレーキをかけ「本祭りはいつですか?」と待ち遠しそうだ。
6日後の秋祭りには、またここに人が集結する。
「来週までバイバイね!」再会の約束をして振り返る母と子の足取りは弾んでいる。
今回取材にご協力いただきました三津屋祭会の皆様、ありがとうございました!