盛春のパレード 〜高尾神社さん春の例大祭〜
オニギリ 2024年5月10日
雨の中の大行進
1.想い受け継ぐ本殿祭
山がちな地形の夕闇に浮かび上がる提灯の光。明日の春の御神幸祭を前にした、高尾神社さんの本殿祭だ。
新型コロナウイルスの疫病に負けないようにと、先代の神主さんが知恵を絞った手水場の近く。
想いを受け継ぐ当主の玉井さんが大麻をふるう。
厳かな雰囲気に水を差さぬよう、そろりそろりと足を運ぶ。
取材のメモをするわずかな間に、お社さんが人でいっぱいになった。
2.明かり灯る直会
500年以上前と変わらない空と海が広がる、やぐらからの大パノラマ。
この街の風景をひとりじめできる特等席は、子どもたちから大人気のようだ。そのやぐらにつながる手作りの会食場には明かりが灯り、人々が集う。
「ドンチッチキチッチ」
どこからともなく、あの太鼓と鉦のリズムが聞こえてくる。音の鳴るほうへ、吸いこまれるように歩いていく。
「明日はオレの出番だ!」静かに佇む子どもだんじりが、そう意気込んでいるように見える。
屋台がこの街を駆け巡るであろう、明日の朝は早い。
3.雨の中の大行進
「降水確率90%」
非情な天気予報を見て、ため息がもれる。今日の御神幸祭は、無事に行われるだろうか?
そんな心配を覆すかのように、法被の袖に腕を通す人々。
「雨天決行、そうこなくちゃ」と言わんばかりに、太鼓のばちを手に取る子ども。
お社さんの影から勢いよく姿を見せた屋台が、小躍りするように鳥居をくぐってきた。
雨の音をかき消す伊勢音頭と、ほとばしるエネルギー。
神々を敬う気持ちを、清めの雨を受けとりながら全身全霊の行事であらわす。
祭人のみなさんの想いに、天候は関係ないようだ。催花雨のもと、たくさんの笑顔が咲いた。
4.日本のマラケシュ
世界のお祭りを集めた本のページをめくる手が、ふと止まる。
「毎日がお祭りの街」モロッコのマラケシュという街は、朝も夜も、365日がお祭りだという。
毎週末のようにどこかでお祭りが催され、平日もその準備に余念がないこの西条市は、さながら日本のマラケシュというべきか。
国内外を探しても、年間を通じてこれほど人とお祭りが繋がっている場所は、そう多くはないだろう。
地域の方々が腕によりをかけた料理を頬張る子どもや、地酒に舌鼓を打つ大人たち。歌声と笑い声に包まれる広場。
マラケシュも、そのような空気で満たされているのだろうか。
早く秋が来ないかな。遠ざかっていく屋台に心の中で手を振りながら、何度もくりかえす。
今回取材にご協力いただきました高尾神社子どもだんじりさん、巴会屋台さん、ありがとうございました!