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「一人一役。ベンチ総動員の全員野球」 ~小松高校編~ 【前編】

これまでは、県大会の壁を突破することが出来なかった小松高校。大きな転機となったのは、川之江高校や今治西高校を甲子園に導き、甲子園ベスト4の実績もある宇佐美秀文うさみひでふみ監督が就任した2010年。宇佐美監督を慕って市内はもとより、市外や県外からも選手が集まりました。今回の主人公、奥田和志おくだかずし君(6番ライト)もその一人。宇佐美監督の手腕、OB会の支援もあり、恵まれた環境のなか、小松高校はメキメキと頭角を現し、県内の高校野球界から一目置かれる存在に。そしてついに2014年の夏、創部初の甲子園出場を決めました。そこで、甲子園出場を果たした当時のナインである奥田君に当時の思い出やエピソードを伺いました。

奥田和志君

#親元を離れ、新天地での野球生活

奥田君は愛媛県砥部町出身。高校の進学先に悩んでいたところ、今治西高校時代、宇佐美監督に指導を受けた実兄の勧めもあり、小松高校への進学を決意。親元を離れて新天地での高校生活が始まります。入学したものの彼にとって西条市は縁もゆかりもない無知の土地。

「最初は寂しかったですが、それを忘れるくらい野球が忙しく、日々の練習をこなすことで精一杯でした。また、寮生活も初めてでしたが、寮母さんがとてもやさしくて温厚な方だったので、なんとか頑張ることができました。」

奥田君の持ち前の明るさと人懐っこさでチームメイトやクラスメイトにもすぐに溶け込み、寂しさも吹っ飛び、厳しくも明るい高校生活が送れたそうです。

 

#恩師宇佐美監督のもと挑んだ甲子園

「宇佐美監督からは最初に感謝の気持ちをもつことの重要性について教わりました。また信頼される人間になるためには、まずは担任の先生に信頼される人間になるようにと口酸っぱく言われました。」

と人間性を大事にとの指導を受けました。現役中もその後も奥田君の人生に大きな影響を与えた恩師です。

チーム全体の練習はグラウンドでの通常練習に加え、週7回のウエイト、週1回ヨガのトレーニングは必ず行い、彼自身も「ほかの人より頑張らないといけないという気持ちで練習していました。」と自主練など人一倍努力しました。

市内、市外、県外関係なく垣根を越えて志一つに目指す場所は甲子園です。

 

#浮上のきっかけは市内大会

奥田君が中心世代となった2年の秋です。秋の大会は肉離れにより出場できず、チームも東予地区予選2回戦敗退。悔しい気持ちのなか、冬の間はさらにウエイトに励み体づくりを徹底しました。すると春先からホームランを打てるなど実力をつけ、春以降はレギュラーに定着。しかし、チームは春の大会も県大会1回戦敗退となかなか結果が出ませんでした。

浮上のきっかけがつかめないまま、5月に開催された市内大会(西条市内5校での大会)。当時、秋、春の県内公式戦で無敗だった西条高校に勝利。

「西条高校に勝てて自信がつき、全員のモチベーションがあがりました。」

と市内大会の勝利がチーム浮上のきっかけに。その後の練習試合も連勝を重ねました。

しかしながら、夏はノーシード。組み合わせを見たときは「(口には出さなかったが)厳しいところに入ったな(汗)。」と少し弱気に。ところが、副キャプテンの土岐君が「いけるぞ!いけるぞ!」と士気を上げるアツイ言葉でチームを鼓舞。その時にはチームとしてもキャプテンの日野君を中心としてチームや練習の雰囲気も良く、最高の状態で最後の夏を迎えます。

 

#決勝前日、監督からのゲキ

先述のとおり、いきなり厳しい戦いです。2回戦の相手は練習試合で負けていた川之江高校。「ホームランと三塁打を打ちました。」と奥田君の活躍もあり、コールドで勝利。まだまだ強豪は続き3回戦の相手は第3シードの帝京第五。「この試合7-6の僅差で勝利したことで自信となりました。ここが山場だったのかなと思います。」と競り勝った小松は勢いに乗ります。準決勝では市内のライバル第2シード西条高校。この試合も終盤突き放し、9-2でコールド勝ち、とうとう決勝戦まで勝ち上がりました。

あと一つで甲子園、相手は同じくノーシードの松山東です。選手は意気揚々としていますが、決勝前日に、

「監督さんから過去同じようなケースがあり、準決勝で強豪に勝って、決勝で負けた前例があったそうです。また松山東も有望選手が多く、さらには第1シード今治西に勝って勢いに乗っていました。そこも含め監督さんに気を引き締め直されました。」

と宇佐美監督からゲキを受けました。

迎えた決勝戦では途中までは接戦でしたが、終盤またも突き放しました。しかし、「油断やおごりは一切なく最後のアウトをとるまでは気を引き締めていました。」と宇佐美監督の教えを最後まで守ります。結果、10-1で初優勝を飾り、優勝のアウトをキャプテンがとった瞬間は無我夢中でマウンドにかけよりました。

歓喜の瞬間の小松高校ナイン

「うれしい気持ちと安心した気持ちの半々でした。ただこの時点ではまだふわふわした気持ちだったので甲子園にいけるという実感は後から沸きました。」

とこの感情は優勝した球児にしか味わえない特別な感情です。

今大会、投手陣は小刻みに継投し目線を変える、野手陣は狙い球を絞って終盤打ち崩すを基本に、攻撃、守備の選手が明確に分かれていたこともあり、宇佐美監督が選手の適性、ゲーム内容を見ながら適材適所に選手を起用して、その起用に選手が応えるというベンチ総動員で掴んだ初優勝でした。

小松に凱旋後、「学校へ戻ったときにたくさんの人が祝福をしてくれました。学校のグラウンドで優勝報告をしたのはいい思い出となっています。」

と地域の方も来てくださり、優勝の喜びを分かち合いました。

表彰式の様子(左から8番目が奥田君)

小松高校編 後編はコチラから

 

 

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